【はじめに】「総会屋2.0」は何が問題なのか
先日、kawango氏が山本一郎氏を「総会屋2.0」と呼んだことが話題になりました。
山本氏は、実際にどのような人物なのでしょうか。
本当に「総会屋」のような仕事をしているのでしょうか。
ご本人の経歴や発言などの、確かな情報を元に検証したいと思います。
INDEX
1 - 影響力の大きい山本氏の発言
山本一郎氏は、1973年生まれ、ブロガー、投資家、イレギュラーズアンドパートナーズ株式会社代表取締役などで知られています。
Twitterでは10万人のフォロワーがいて、山本氏の語り口調や、発信される情報の面白さ、議論の強さなどから、ファンの方も多いことと思います。
全体で月間1億5000万のPVがある「Yahoo!ニュース個人」のオーサーでもあり、「やまもといちろう砲」の異名で有名です。先般、12/7に開催された「Yahoo!ニュース個人 オーサーカンファレンス2016」にも登壇しました。
出典:https://twitter.com/Fuwarin/status/806438929784147968
また、ネットだけに限らず、フジテレビ系列「情報プレゼンター とくダネ!」のレギュラーでもあり、NHKほか多数のテレビにも出演する、とても発言力の大きい人物です。
ですが、kawango氏の発言にあったように「総会屋」のような仕事をしているのだとしたら、山本氏の発言には「世のため、人のため」とは異なる、別の目的が含まれているのかもしれません。また、そのようなフェアでない発言に大きな影響力があるのは問題です。
2 - 「チョウチン記事は絶対に書かない」
「総会屋2.0」と呼ばれた山本氏は、自らそれをネタにして否定しました。
また、このインタビューでは「チョウチン記事は絶対に書かない」とも明言しています。
さらに、話題となったAppBank社のステマ問題を追及する記事では、次のように述べています。
「総会屋2.0」に孕む問題性は、山本氏自身が指摘するこのステマ問題と共通する部分がとても多いです。さすがと言うべきか、「こういう件」に関する理解が深いためか、普段から身近なことなのか、的確に問題を指摘している記事なので、長くなりますが引用します。(※太字・下線は筆者による)
やっぱりメディアという仕事は高い倫理観を持って王道を歩んで欲しいと思うンゴねぇ…。<中略>
ステマ(ステルスマーケティング)<中略>の問題は、要するに「客観的で中立な記事を装ってメディアが掲載したけど、その記事は金もらって、業者にとって有利な宣伝となるよう手配されていた」ことに課題があります。読者からすると、普通の記事に見えるため、うっかり信じ込んで、これは良いものだと読者が思い込んでしまう。これを、『優良誤認』といいます。<中略>
「取引の確認を明示されているか」と「有利誤認や優良誤認を消費者に導くものであるか」です。前者は<中略>金を包んできた業者の言うとおりに権威を振るうこと。後者は<中略>品質や効果が実態と異なるほど素晴らしいものであると誤認させるかです。一般論として、アプリにおけるステマとは「広告宣伝費やタイアップ料を媒体が受け取っていながら、その関係性を明示しないで提灯記事をダマで書く」ことと、「大して凄くもないアプリを、凄いものであるかのように見せる」優良誤認を導くことで、景品表示法上の不当表示であり違反だと判断されるわけです。<中略>
一連の話は、<中略>むしろその媒体の信頼の問題であり、読者と媒体がどういう関係を築くか、ロイヤルユーザーが参考に足る記事を書いて媒体と一緒になってどこを目指すのかということですので、媒体の倫理観だとか、物事を正しく運ぶ意欲や能力があるかといった内容になるわけであります。<中略>
しかしながら、AppBankに限らず、この手のステマをやってくれる媒体社はだいたい”累犯”で、代理店やPR会社は「この媒体社は何でもありだから金を払えば提灯記事もステマもやってくれる」と分かり次第、繰り返し依頼をしてきます。<中略>モラルさえ捨てればおいしくてやめられないというシャビーな感じになるわけであります。
3 - ネット前史から続く「総会屋」問題
ステマはいわば「隠れチョウチン記事」「隠れ擁護」ともいえる問題ですが、総会屋は「擁護」や「火消し」だけでなく、「攻撃」も「荒らし」するので一層悪質です。また、態度が敵から味方へ、味方から敵へ容易に転ずるのも特徴です。
山本氏は、上記のAppBank社をはじめ、さまざまな企業の不正や問題を告発してきました。
事実関係が間違ってないならば問題ない、企業の不正を告発するのは良いことだ、誰しも色んな立場があるのだから仕方がない、と思う方もいるかもしれません。
しかし、そのような行為はかつてから「ブラック・ジャーナリズム」として問題視されていたことなのです。
kawango氏が「総会屋2.0」と呼んだように、もちろんインターネット以前にも、いわば「総会屋1.0」の問題がありました。Wikipediaから抄出して引用します。
●進行係(与党総会屋)
会社の説明に「原案賛成」「異議無し」の立場で進行を図る者。無風の「シャンシャン総会」にさせるのが仕事。ただし、会社側の態度や対価によっては、総会荒らしに転じる危険も有する。
●会社ゴロ(野党総会屋)
総会で無意味な発言や質問、スキャンダルに関する質問を繰り返し、議場を混乱させることで己の存在を認めさせた上で、その行為を止める事への「対価」として利益を得ようとする者。
嫌がらせのタイプも幾つかあり、幹事総会屋の下に、攻撃屋、防衛屋、仲裁屋と役割分担し台本を書いて動く者をはじめ、噂をばら撒いて企業の信用を毀損する行為を行う者(事件屋)などが居る。
●新聞屋(出版屋、雑誌屋、通信社など)
総会屋とブラックジャーナリストの中間に位置し、新聞や雑誌を発行する。
ブラックジャーナリストとは企業のスキャンダル等をネタに金銭を要求し生計を立てているジャーナリストの総称。
仕手筋と組み、ターゲットの評価を落として株価を下げて空売りで利益をあげようとする者もいる。巧言を用いて企業に食い込み大金を巻き上げる方法を取る者などは事件師とも言われ、組織内で高い評価を受ける。
近年、独自のインターネットサイトを持つブラックジャーナリストが複数いることが確認されている。
ブラックジャーナリストはスキャンダル暴露型とスキャンダル捏造型の2種類に大別できる。前者は実際にスキャンダルが存在しているため、もみ消したい企業がブラックジャーナリストに金銭を渡すこともあるが、多くの場合、後日雑誌等に掲載されることになる。
ステマが景品表示法に抵触するように、総会屋の行動は「会社法第120条」で規制されています。
以降の記事で取り上げるような山本氏の一連の行動が、この法律に抵触するか、否かについては法曹界にお任せします。
しかし、現行法に抵触しなくとも倫理的な問題が残るのならば、新たな法整備が必要であるのかもしれません。
また、雑誌の誹謗中傷記事を争う裁判では、その記事の執筆者のみならず出版社も併せて訴えられます。問題がある記事は執筆者のみならず、注意義務を怠って流布したメディアにまで責任が及ぶのは、ネットニュースでも同じです。
(参考:ヤフー 産経の配信記事掲載し名誉棄損で賠償命令 | R25)
前置きが長くなりましたが、山本一郎氏は自身の言葉を守れているか、「総会屋2.0」にはどのような問題があるのか、第1回の記事ではAppBank社への追及について検証します。