【第2回】山本一郎氏のCAモバイルとの離別、楽天への癒着
第1回の記事ではAppBank社の背後にあった取引関係について検証しましたが、この記事ではAppBank社に途中まで関わっていたサイバーエージェント・グループと、楽天との関係について検証します。
INDEX
1 - CAモバイルとの連結解消
前回の記事で取り上げた「株式会社ユーフォロス」は、サイバーエージェント・グループの株式会社シーエー・モバイル(以下、CAモバイル)が67%、山本一郎氏が設立したイレギュラーズアンドパートナーズ株式会社(以下、I&P社)が33%の共同出資で設立した合弁会社でした。
しかし、2009年6月〜2010年1月のどこかのタイミングで、CAモバイルはユーフォロス社を手放し、連結を解消することになります。
CAモバイルのHPのインターネット・アーカイブを遡ると、会社概要のグループ会社の欄から「株式会社ユーフォロス」が消えていることから確認できます。
↓
出典:http://web.archive.org/web/20090622092957/http://www.camobile.com/about/index.html?
http://web.archive.org/web/20100104023618/http://camobile.com/about/index.html
どのような理由でCAモバイルがユーフォロス社を手放したのかは不明ですが、この前後で山本氏のサイバー・エージェントに関する発言がどう変わったかを確認します。
山本氏のアカウントから「サイバーエージェント/CA/ameba/アメーバ/サイゲームス/cygames/CAモバイル/シーエーモバイル」のいずれかの文字列を含むツイートのみを抽出すると、最も古いツイートは次のものになります。
サイバーエージェントのやらせ問題 http://bit.ly/rdZHd
— 山本一郎(やまもといちろう) (@kirik) 2009年9月8日
山本氏のツイッターアカウントの開設は2007年4月、本格稼働は2009年6月からになります。上記の前に1100以上のツイートがありますが、サイバーエージェント・グループに関する直接的な言及はありません。
その後、次のように続きます。細かい言及のものは避けて、特徴的なもののみ恣意的に取り上げますが、詳細はツイートを抽出したリンクをご参照ください。
一時的にサイバーエージェント株を全部処分。たいした量でもねえけど。
— 山本一郎(やまもといちろう) (@kirik) 2009年12月22日
「サイバーエージェント「アメーバブログ」の「ノートン警察」がトロイの木馬に感染?」とりあえず、ブログに書いておいたで。 http://bit.ly/7s4TTA
— 山本一郎(やまもといちろう) (@kirik) 2010年1月7日
凄いなあ、CAモバイル。自分から情報漏らしておいて、NDA遵守してますとよ。
— 山本一郎(やまもといちろう) (@kirik) 2010年2月26日
また、2012年以降はブログやメディアでの言及も多くなります。
サイバーエージェントの媒体資料に真心を込めたステマぽい提案の真髄を見る http://t.co/j0oWrcTj
— 山本一郎(やまもといちろう) (@kirik) 2012年2月8日
GREEやDeNAやKlabやサイバーエージェントがコンプガチャ自粛 http://t.co/JLuGUXa4
稲川淳二「サイバーエージェント絶好調だなーって」 http://t.co/qacfkgv2
— 山本一郎(やまもといちろう) (@kirik) 2012年8月2日
ペニオク詐欺騒動に巻き込まれたサイバーエージェントとステマ商材を担いでしまった芸能人 http://t.co/7vdBeKJR @biz_journalさんから
— 山本一郎(やまもといちろう) (@kirik) 2013年1月29日
サイバーエージェントの暑い夏 http://t.co/EXiH7t806Y
— 山本一郎(やまもといちろう) (@kirik) 2013年7月31日
サイバーエージェント「ameba」が4ヶ月問題放置で24万件という見事な個人情報漏洩事件をやらかす http://t.co/qbX2yvNTDT
— 山本一郎(やまもといちろう) (@kirik) 2013年8月13日
サイバーエージェントがツッコミどころ満載のスライドを発表 http://t.co/BrAPgFrpXY
— 山本一郎(やまもといちろう) (@kirik) 2013年10月4日
上記のように攻撃的な内容が多いですが、これらが公正な態度の問題・不正の追及であったのか、ポジション・トークであったのかは断定できません。
ここでは「CAモバイルと関係が解消されたであろう以降に、攻撃的な言及が現れるようになった」ということのみ記しておきます。
2- 山本一郎氏がこの時期に悩んだこと
CAモバイルとの関連は不明ですが、山本氏は自身のブログである悩みを告白しています。
傭兵稼業 - やまもといちろう はてな避暑地(※太字・下線は筆者による)
2009-08-20 傭兵稼業
■ 誰の犬になるかは悩む
金のために働くのが傭兵稼業であるのは割り切るとして、その傭兵が誠実に職務をこなそうとした場合に、雇い主のどの部分を信じて忠実であるべきかは悩ましい。事案の成立のために誠実であるのか、合法性を担保するために誠実であるのか、人間としてあるべき行き方に誠実であるのか。
まっとうに生きるのってむつかしいね。お金を持っていたとしても。
山本氏は「金のために働く傭兵」であり「誰かの犬」であったそうで、「誰の犬になるか」を悩んでいたそうです。
わんわんお
— 山本一郎(やまもといちろう) (@kirik) 2009年6月26日
わんわんわんわん
— 山本一郎(やまもといちろう) (@kirik) 2009年6月26日
ということだそうです。
上記は揶揄する目的で掲載したのではなく、このツイートを取り上げる必要性がありました。それは、この「2009年6月26日(金)」という日は、社会問題となっていた総会屋を出席させないための対策として、企業が意図的に同日に開催するようにしている「株主総会集中日」でもあるからです。
株主総会集中日の決まり方 | リサーチ | 大和総研グループ | 鈴木 裕
・6月最終営業日の前営業日
・当該日が月曜日である場合には、その前週の金曜日
3 - 楽天GEのアドバイザーに就任
2015年2月に、山本氏が東北楽天ゴールデンイーグルスの「チーム戦略室アドバイザー」に就任したことが話題になりました。
出典:http://www.rakuteneagles.jp/news/detail/4888.html
このことによって楽天に対する発言がどのように変わったのかを比較します。
ブログとメルマガのなかで、楽天を取り上げた回をすべて時系列順に並べます。
2010/7/7:やまもといちろう - ネット民、楽天の社内公用語を英語にするという三木谷社長の微妙な英語力を心配する(追記あり) - Powered by LINE
2011/10/21:やまもといちろう - 楽天が横浜買収で「DeNAは出会い系だから反対」と歴史的大ブーメランを投擲 - Powered by LINE
2012/8/7:人間迷路 Vol.017 楽天koboちゃんが面白すぎる件と、中国の情報統制が堤防決壊で結構あれこれ騒ぎ発生の件など > The Book Project 夜間飛行 | 受信箱に本が届く
2012/10/25:やまもといちろう - 楽天kobo、消費者庁に行政指導を無事喰らう - Powered by LINE
2013/3/16:やまもといちろう - 楽天マートが凄いことになっている件で - Powered by LINE
2013/9/3:楽天が2億ドルで動画サービスという名目のクラウドソーシング事業を買収(山本一郎) - 個人 - Yahoo!ニュース
2013/11/8:やまもといちろう - 【号外】楽天・三木谷浩史さん周辺で薬事法が出火で面白事案発生中 - Powered by LINE
2013/11/10:「胡散臭い三木谷楽天」と自民党の深谷隆司さんがスピーキング問題(山本一郎) - 個人 - Yahoo!ニュース
2014/6/5:「ドラクエ10」不正業者と黒幕のクズ(修正あり)(山本一郎) - 個人 - Yahoo!ニュース
2014/9/10:Appleのモバイル決済システムや楽天の米EC事業買収から見るプライバシーの考え方(山本一郎) - 個人 - Yahoo!ニュース
タイトルだけでも分かるように、そのほとんどが攻撃的な内容です。
しかし、2015年からは一転、擁護・火消しする内容の言及が現れます。
別のスキャンダルめいた話があるかもしれないけど、三木谷さんは本件DeNAのお家騒動とは全然関係ないんじゃないの? : DeNA、業績低迷で南場元社長のトップ復帰観測広がる 楽天・三木谷との激突再燃か http://t.co/EXeiUgoqmU
— 山本一郎(やまもといちろう) (@kirik) 2015年1月21日
- 楽天Koboスタジアム宮城の新設スタンドに演出向上・広告枠拡大を狙ったLEDビジョン登場!! via #Kamelio https://t.co/whYUlHrYBV
— 山本一郎(やまもといちろう) (@kirik) 2015年2月10日
アドバイザー就任は、2015年2月12日です。
2015/4/18:中国への大規模な個人情報漏れ事件は、通商破壊目的のサイバー攻撃か(山本一郎) - 個人 - Yahoo!ニュース
特に、楽天銀行の口座凍結に関する擁護は、異論が多かったことがニュースにもなりました。
2015/9/27:やまもといちろう - ネット銀行経由での詐欺が多発している件で - Powered by LINE
2015/10/6:ネット銀行やメガバンクの口座が一時凍結されてしまった、そのときは(山本一郎) - 個人 - Yahoo!ニュース
このように、アドバイザー就任によって、楽天に関する言及が攻撃から擁護へ鮮明に態度が変わったことが確認できます。
無償ボランティアではなく仕事であるならば報酬が発生しているはずですが、山本氏はこの業務がどれだけの内容で、どれほどの報酬を得ているのでしょうか。
また堀江貴文氏は、山本氏の就任について(野球チームの大久保監督ではなく)三木谷社長によるトップダウン案件であるらしい、とツイートしています。
山本一郎の楽天への中傷を抑えられると思っているのでは?笑これ三木谷トップダウン案件らしいし。
— 堀江貴文(Takafumi Horie) (@takapon_jp) 2015年11月30日
RT @kadongo38: こういう下品な人間を飼っている三木谷氏はどういうつもりなのか、さっぱり分からない。楽天への中傷を山本一郎氏がいれば抑えてくれるとでも思っているのだったら、
ここで問題とするのは、いわゆるステマ問題にあるような「有利誤認」「優良誤認」ではありません。山本氏の立場は明確であるし、読者もそのように読めます。
これは行き過ぎた懸念であるかもしれませんが、前述のようなAppBank、CAモバイル、楽天の3社に対する態度の転向を考えると、次のようなことも考えられます。
- 「やまもといちろう砲」をやめさせるには、楽天のように仕事を発注する取引先となってお金を払わなければいけないのか
-
しかし、AppBank社やCAモバイルのように関係が終わると、取引や内部にいたことで知り得たかもしれない情報による攻撃が再び始まるようになるのか
- また、山本氏がレギュラーコーナーを持つYahoo!ニュースやフジテレビなどの影響力の大きいメディアが、「総会屋の拡声器」として「太鼓持ちの太鼓」として利用される危険性があるのではないか
話が戻りますが、第1回で取り上げたAppBank社のマックスむらい氏は、山本氏への反論動画のなかで次のように述べています。
本件に関して、この週末に山本一郎氏の下部組織の面々からAppBankの過去の退職者宛てに、「社内情報を持っていないか」「木村の連絡先を知らないか」「他の退職者の連絡先を知らないか」などなど連絡が回っているということを報告を受けています。
また、山本氏は20代に企業の不祥事調査専門の探偵として2年半ほど働いていた経験があり、対象の会社に実際に就職をして退職を繰り返すなどし、20社近くの調査をしたことをインタビューで話しています。(※太字・下線は筆者による)
大学の先輩が探偵社をやるというので、事業の立ち上げ方を知るためにも、まずそこで探偵になりました。
――探偵に!?
その探偵社は対企業で、不祥事の調査専門だったんです。例えば、横領事件とか横流しといった事件を調査するときに、わざわざ相手の会社に就職をして中に入って調べるみたいな、そういうことをやる。起業のための修行と思っていましたが、想像以上に楽しい仕事で、途中で事業売却するまで、2年半ほどやっていました。
――その頃に培われたものって、今の発信にも生かされている……?
そりゃあもう。例えば探偵の基本動作である「ゴミ箱を漁る」ということなど、調査にとても役に立つことを知りました。会社では上の人がいろいろな指示を出して、その指示を人に伝えるためのメモを書きますが、それはいずれゴミになるわけです。だから、真実というのは、意外とゴミ箱の中にあったりする。
書きかけの書類がそのままゴミ箱に捨てられていて、そういう情報をつなぎ合わせて真実に迫る、みたいなことは、私の性分として合っていたんだろうと思います。
それから、いかに見知らぬ組織に入り込むかということも経験しました。ご一緒した会社での調査方法は、対象の会社に実際就職して、数カ月から半年くらいその会社で仕事をして、中で人間関係を築いて……というもの。そうやって、中にいないとわからない問題を聞き出さなければいけない。
出典1:戦場の移り変わりについていけない人は死ぬ 「切込隊長」から「山本一郎」へ【発信の原点】(Yahoo!ニュース個人 アプリ特別企画) - 個人 - Yahoo!ニュース
「実際にしかるべき仕事について、その会社の社員になって調査をするのが普通ですね。」
山本さんがここ2年間で調査した会社は18社。<中略>山本さんによると、企業の機密データの流出は、外部からネットワークを通じて入り込むクラッキングより、社内の人間によるものがほとんどだそうだ。
出典2:私立探偵 山本一郎さん|「やまもといちろう(山本一郎・切込隊長)」考察
【はじめに】で解説しましたが、楽天や上記の探偵業務のように、企業の内部に食い込んで擁護したり不祥事を探る手法は、ブラック・ジャーナリズムによく似ています。
【最終回】山本一郎氏と音事協"重鎮" との蜜月に続きます。